影見れば波の底なるひさかたの空漕ぎわたるわれぞさびしき (土佐日記)
篝り火の影し映ればうばたまの夜川の底は水も燃えけり (古今集)
水底に影し映ればもみじ葉の色も濃くやなりまさるらむ (古今集)
紀貫之
清水寺の池に一面に映っている桜の花を見ました時、あまりの美しさに驚きました。
桜の木が幾重にも幾重にも深く深く映っているのです。空はもう水底では宇宙のように広がっています。
これこそ宇宙と感じました。その水底の情景に心を囚われ、毎年その水底の桜を見に行くようになりました。
池から顔をあげて桜を見ましたらそれはそれで勿論美しいのですが、空もたしかに宇宙につながってはいるのですが、桜もそれこそが本物ではあるのですが。
虚の桜と宇宙はまた格別に私を感動させるのです。
このことを何度か短歌にしようとは思ったのですが、なかなか難しい試みでした。